
いつか自分の会社を立ち上げたい、あるいはスタートアップを創業したいという思いを持ちながらも、会社員としてどう過ごせばよいのか分からずにいる方は少なくありません。目の前の仕事に追われるうちに、その思いを漠然と抱えたままになっているケースも多いはずです。
実は、多くの起業家が会社員としての経験を土台にして事業を立ち上げています。いきなり独立するのではなく、在職中に何を身につけ、どう動くかを計画的に考えることが、将来の選択肢を広げることにつながります。
この記事では、転職支援実績を持つ国家資格キャリアコンサルタントが、起業・スタートアップ創業を見据えて会社員のうちに積むべき経験とキャリア設計を解説します。
起業やスタートアップ創業は、思い立った瞬間に実現できるものではありません。事業を形にするための知識やスキル、人脈といった土台の多くは、会社員として働く中でこそ効率よく積み上げられます。そのため、起業を考え始めた今のうちから、会社員としての経験を意図的にキャリア設計に組み込んでいくことが重要です。
理由は大きく2つあります。会社員という立場は、収入を確保しながら新しい分野に挑戦したり、失敗から学んだりできる環境です。もし在職中にさまざまな経験を積んでおけば、独立後に一から手探りで学ぶよりもスムーズに事業を進めやすくなります。
もう一つの理由は、事業を軌道に乗せるまでには一定の準備期間が必要という点です。とはいえ、焦って動き出すよりも、土台を整えてから踏み出すほうが、結果的に事業の実現可能性を高めやすくなります。
会社員として働く環境には、上司からのフィードバックや他部署との連携、社内の意思決定の仕組みなど、事業運営に応用できる要素が数多くあります。日々の業務をこなすだけでなく、そうした仕組みを観察し、自分ならどう活かせるかを考える視点を持つことが、将来の準備につながります。
一方で、ただ漠然と会社員を続けているだけでは、起業に必要な経験は自然には身につきません。目的意識を持って、どの経験を積むかを選び取る姿勢が求められます。次の章では、具体的にどのような経験を積んでおくとよいかを見ていきましょう。
起業に向けて会社員のうちに積んでおきたい経験を、6つに整理しました。すべてを完璧にこなす必要はなく、自分が目指す事業や業界に合わせて、優先順位をつけながら取り組むとよいでしょう。
事業計画やお金の流れを読む力
事業計画書や損益計算の基本を理解しておくと、アイデアを具体的な事業として組み立てやすくなります。日々の業務で予算や数字に触れる機会があれば、意識的に数字の意味を読み解く習慣をつけましょう。経理や事業企画の部署と関わる機会も、貴重な学びの場になります。
特定分野での専門性
どの業界・分野で事業を行うにせよ、専門知識や実務経験があるほど、事業の説得力や実行力が高まります。今の仕事の中で得意分野を深掘りし、専門性を磨いておきましょう。専門性は、将来の事業アイデアの核にもなり得ます。
社内外の人脈づくり
起業後は、取引先や協力者、資金提供者など、さまざまな人との関わりが欠かせません。社内外の勉強会やプロジェクトに参加し、信頼できるつながりを少しずつ広げておきましょう。人脈は、事業のヒントや協力者との出会いにもつながります。
マネジメントやチームづくりの経験
事業が軌道に乗れば、いずれ人を採用し、チームを動かす場面が出てきます。後輩の指導やプロジェクトのリーダーを任される機会があれば、積極的に引き受けてみましょう。人を動かす難しさと工夫は、経験してみないと分からないものです。
副業や社内新規事業での実践
副業や社内の新規事業提案など、小さく事業を試せる場は、実践的な経験を積む貴重な機会です。会社のルールを確認したうえで、無理のない範囲から挑戦してみましょう。小さな実践の積み重ねが、事業アイデアの検証にもなります。
失敗やトラブルへの対応力
事業運営では、想定外のトラブルがつきものです。会社員のうちに困難な案件やクレーム対応を経験しておくと、冷静に問題を整理し対処する力が養われます。逃げずに向き合った経験は、そのまま起業後の対応力に直結します。
起業に向けたキャリア設計は、思いつきで動くのではなく、段階を踏んで組み立てることで実現に近づきます。ここでは4つのステップに分けて考え方を整理しました。
まずは、今の業務を通じてどんな知識やスキルが身についているかを振り返りましょう。当たり前だと思っている業務にも、起業に活かせる要素が隠れていることがあります。棚卸しをすることで、自分に足りない経験も見えてきます。
興味のある事業領域と、これまで培ってきた強みを重ね合わせてみましょう。強みと事業アイデアが結びつくほど、実現に向けた解像度が高まります。この段階では、アイデアを絞りすぎず、複数の可能性を書き出してみるのもおすすめです。
副業や勉強会、社外プロジェクトなど、会社の外で試せる場を少しずつ増やしていきましょう。小さな実践を積み重ねることで、事業アイデアの検証にもつながります。社外の人との対話を通じて、自分では気づけなかった視点も得られます。
起業後は収入が不安定になる時期が想定されます。生活費や当面の運転資金をどう確保するか、在職中から具体的に計画しておきましょう。家計の見直しや貯蓄計画も、キャリア設計の一部として位置づけておくと安心です。
動き出す最適なタイミングは人によって異なります。だからこそ、感情に流されて焦って決断するのではなく、いくつかの判断軸を持っておくことが大切です。
判断軸としては、次のような視点が参考になります。
事業アイデアが小さくても検証できているか
必要なスキルや人脈が一定水準そろっているか
生活基盤や当面の資金の見通しが立っているか
家族などまわりの理解が得られているか
これらの軸に照らして、今の自分がどの段階にいるのかを定期的に振り返る習慣を持ちましょう。すべてが完璧に整うタイミングを待つ必要はありませんが、判断軸を意識することで、勢いだけに頼らない決断がしやすくなります。
一つの軸だけで判断せず、複数の軸を組み合わせて総合的に考えることも大切です。状況は年齢とともに変化していくため、定期的に振り返りながら、自分にとって納得できるタイミングを探っていきましょう。
起業への思いが強くなるほど、今すぐ会社を辞めて動き出したくなることがあります。しかし、焦って退職する必要はありません。
在職中にできる準備は数多くあります。収入を確保しながら経験を積み、検証を重ねるほうが、リスクを抑えながら着実に事業の土台を固められます。もし退職を考えているのであれば、まずは今の環境でできることをやり切ってから判断しても遅くはありません。
また、起業に関する情報収集は大切ですが、特定の起業塾やスクールに頼りきる必要はありません。書籍やセミナー、社内外での実践を通じて、自分に合った学び方で知識と経験を積み重ねていきましょう。
最終的に事業を形にするのは、誰かの教えではなく、自分自身が積み上げてきた経験です。焦らず、今できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
起業やスタートアップ創業に向けた準備は、退職してから始めるものではなく、会社員のうちから計画的に積み重ねていくものです。積むべき経験とキャリア設計の考え方を押さえておけば、焦らず着実に将来の選択肢を広げられます。
起業家の多くは会社員としての経験を土台に事業を立ち上げている
積んでおきたい経験は、専門性・人脈・マネジメント・実践など多岐にわたる
キャリア設計はステップを踏んで組み立て、判断軸を持って動き出す時期を見極める
今すぐ辞める必要はなく、在職中にできる準備から始めれば十分
今の仕事を大切にしながら、少しずつ起業に向けた経験を積み重ねていきましょう。
Q. 起業したいなら、今の会社をすぐ辞めたほうがいいですか。
焦って辞める必要はありません。多くの起業家は、会社員として経験やスキル、人脈を積んでから独立や創業に踏み出しています。まずは在職中にできる準備を進め、事業の土台がある程度固まってから動き出すことを検討しましょう。
Q. 起業に向けて、何歳までに動き出すべきですか。
年齢だけで判断できるものではありません。大切なのは、事業アイデアが検証できているか、必要なスキルや人脈、資金の見通しが立っているかといった判断軸です。年齢にとらわれすぎず、自分の準備状況を基準に考えましょう。
Q. 起業のために特別な学校やスクールに通う必要はありますか。
必須ではありません。今の仕事の中で得られる経験や、書籍・セミナーなどでの情報収集でも、起業に必要な知識の多くは身につけられます。特定のスクールに頼るかどうかは、自分に合った学び方を見極めたうえで判断しましょう。
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