
ある日突然、親の介護が必要になり、この先も今の仕事を続けられるのだろうかと、不安な気持ちで頭がいっぱいになることがあるかもしれません。介護を理由に仕事を辞める人は珍しくなく、辞めた後に収入面や再就職の難しさで後悔するケースも少なくないといわれています。
実際には、介護休業や勤務時間の調整といった両立のための制度が用意されており、辞める以外にも選べる道があります。
この記事では、転職支援実績を持つ国家資格キャリアコンサルタントが、介護と仕事を両立させるための考え方と具体的なステップを解説します。
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によれば、家族の介護や看護を理由に仕事を辞めた人は直近1年間で約10.6万人にのぼり、5年前の調査と比べて増加しています。介護を機に仕事を辞める人は珍しくなく、その多くが後になって「もう少し情報を集めてから決めればよかった」と感じているといわれています。特に介護の負担は働き盛りの世代に集中しやすく、仕事との両立に悩む方が年々増えているともいわれています。介護を理由に仕事を離れると、収入が断たれるだけでなく、介護が一段落した後の再就職が思った以上に難しいという声もよく聞かれます。一方で、介護と仕事を両立している人も多く、企業側でも介護休業や勤務時間の調整といった両立を後押しする制度が年々整えられてきています。つまり、介護が始まった直後に辞職を決断する必要はなく、まずは使える制度や選択肢を知ることが先決といえます。
いきなり完璧な両立を目指す必要はありません。以下のようなステップで一つずつ体制を整えていくと、無理のない形で介護を続けやすくなります。
まずは勤務先の就業規則や人事担当に、介護休業や介護休暇、勤務時間の短縮など、利用できる制度がないか確認してみましょう。想像以上に使える制度が用意されていることに気づくケースも少なくありません。育児・介護休業法では、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して介護休業を取得できる仕組みが定められています。このほか、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで取得できる介護休暇や、所定外労働の制限、時差出勤や短時間勤務といった措置の整備など、事業主に義務付けられた制度も複数あります。制度は法律で最低基準が定められている一方、会社によっては独自に手厚い制度を用意している場合もあるため、まずは就業規則を確認したり、人事担当や上司に相談したりして、自分が使える制度の全体像を把握することから始めましょう。
ケアマネジャーに「仕事は辞めない」と伝えることで、その事情を踏まえたケアプランを作成してもらいやすくなります。介護サービスの組み合わせ方次第で、自分が直接担う部分を減らせる場合もあります。たとえば訪問介護やデイサービスを組み合わせることで、日中の見守りや身体介護の多くを外部のサービスに任せられる場合があります。介護保険サービスの利用者負担割合は所得に応じて原則1~3割となっており、経済的な負担を抱えすぎずに外部サービスを活用しやすい仕組みになっています。仕事を続けたいという意思を早めに伝えておくことで、平日の日中は介護サービスを厚めに、夜間や休日は家族が対応するといった役割分担を前提にケアプランを組んでもらいやすくなります。
短時間勤務やフレックスタイム、時差出勤など、勤務時間を調整できれば、介護の対応と仕事の両立がぐっとしやすくなります。テレワークが可能な場合は、移動時間を減らすだけでも心に余裕が生まれやすくなります。たとえば始業・終業の時刻を前後にずらせれば、通院の付き添いや朝の身支度のサポートと仕事の両立がしやすくなるケースもあります。勤務先に制度がない場合でも、まずは上司に相談し、繁忙期以外だけでも柔軟な働き方ができないか交渉してみる価値はあります。
会社の人事担当や地域の包括支援センターなど、相談できる窓口を複数知っておくことで、一人で抱え込む状況を避けやすくなります。心身の余裕を保つことも、介護を続けていく上で大切な要素です。地域包括支援センターは、介護保険サービスの利用相談だけでなく、家族の悩みや不安についても相談できる身近な窓口です。ケアマネジャーや自治体の窓口、会社の人事担当など、複数の相談先を持っておくことで、一つの窓口だけでは解決しづらい悩みも、別の角度から糸口が見つかることがあります。
介護と仕事の両立が難しいと感じたとき、すぐに辞職を決めるのではなく、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。介護がいつまで続くのかは予測しづらいことが多く、今の気持ちだけで判断すると後にもう一度選び直すのが難しくなることもあります。
収入面での影響や、介護が一段落した後のキャリアの立て直しやすさも合わせて考えておくと、より後悔の少ない選択につながります。たとえば介護に専念するために貯蓄を切り崩しながら生活する場合、介護がいつまで続くか分からない中で経済的な不安が長期化するリスクもあります。
また、一度離職すると、介護が一段落した後に以前と同じ条件で再就職できるとは限らず、キャリアのブランクが選考で不利に働く場合もあります。
もし今の職場での両立がどうしても難しいと感じる場合は、介護と両立しやすい働き方ができる職場への転職も選択肢の一つとして視野に入れてみるとよいでしょう。在宅勤務やフレックスタイムを導入している企業、介護に関する社内制度が整っている企業など、転職先を選ぶ際の軸を明確にしておくと、エージェントに相談する際にも希望を伝えやすくなります。
親の介護が始まったとき、すぐに辞職を決める必要はなく、使える制度や選択肢を知ることから始められます。
介護休業や勤務時間の調整など、両立を後押しする制度が用意されている
ケアマネジャーや会社に仕事を続ける意思を伝えることが両立の第一歩になる
一人で抱え込まず、複数の相談先を持っておくことが大切
介護と仕事の両立は決して簡単ではありませんが、一つずつ情報を集めながら、自分に合った形を見つけていきましょう。
Q. 介護休業はどのくらいの期間取得できますか。
対象となる家族1人につき、通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる仕組みになっています。制度の詳細は改正されることもあるため、勤務先の就業規則や人事担当に最新の内容を確認しておくと安心です。
Q. 会社に迷惑をかけそうで介護のことを伝えにくいのですが。
早めに伝えることで、勤務時間の調整や引き継ぎなど会社側も準備しやすくなります。伝え方に迷う場合は、事実と希望する働き方を整理してから相談するとスムーズです。
Q. 両立が難しいと感じたら転職も考えるべきですか。
今の職場での両立が難しい場合、介護と両立しやすい働き方ができる職場への転職も一つの選択肢です。現在の収入や役割を手放すことになるため、離職を前提にする前に、今の会社で使える制度や働き方の調整余地が本当にないかを先に確認するのが安心です。急いで結論を出さず、キャリアエージェントに相談しながら見極めることをおすすめします。
関連記事
2026/7/16
同業他社への転職はバレる?注意点と円満に進める5つのコツを解説
同業他社や競合他社への転職を考えている20代・30代の会社員に向けて、転職がバレる理由や競業避止義務にまつわる注意点、情報の扱い方、円満退職に進めるための具体的なステップと避けたいNG行動を国家資格キャリアコンサルタントがわかりやすく解説します。
2026/7/16
転職活動は何ヶ月かかる?在職中の応募数やスケジュールの目安を解説
転職活動はどのくらいの期間がかかるのか、何社くらい応募すればいいのかを解説します。在職中の月別スケジュールと応募数の考え方、在職中と退職後の比較まで、国家資格キャリアコンサルタントが具体的に紹介します。
2026/7/16
共働き夫婦のキャリア設計とは?話し合うべき5つの視点とステップを解説
共働き夫婦が仕事と家庭を両立するには、キャリアを「夫婦単位」で設計する視点が欠かせません。話し合いの機会づくりから優先度のすり合わせ、ライフイベントとの連動、定期的な見直しまで、今日から夫婦で実践できる5ステップを国家資格キャリアコンサルタントが解説します。
2026/7/16
リモートワークで地方移住を叶える方法は?理想を叶える手順を解説
今の仕事を続けながら地方移住したい方へ。転職支援実績を持つ国家資格キャリアコンサルタントが、転職なしで移住を実現する3つのステップと、後悔しない進め方のNG・OK例を具体的に解説します。暮らしの基盤を整えるヒントも紹介します。自分らしい働き方と暮らしが見つかります。