
ボーナスが振り込まれて、少し冷静になれたとき——「この会社にいて、10年後の自分はどうなっているんだろう」と考えてしまったことはありませんか。
今の仕事が嫌いというわけではない。でも、業界の先行きが見えない。このまま続けてもスキルが身につく気がしない。年収が頭打ちになる予感がする。そういった具体的な「将来への不安」が、じわじわと膨らんできている方は少なくありません。
国家資格キャリアコンサルタントとして1,000名以上のキャリア支援をしてきた私は、まさにこの「将来が不安で転職したい」という相談を数えきれないほど受けてきました。この記事では、漠然とした将来不安の正体を整理し、あなたが本当に転職すべき状態かどうかを判断するための視点をお伝えします。
「将来が不安」と感じていると、「自分だけが弱いのかな」と感じてしまう人がいます。でも、それは違います。20代が将来に不安を感じること自体は、統計的に見ても非常に一般的な状態です。
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査」によると、20〜29歳の64.9%が「仕事に強い不安・悩み・ストレスを感じる」と回答しています。6割以上の20代が、仕事に対して何らかの不安を抱えているということです。
将来不安は「気が弱いから感じるもの」ではありません。現代の働く20代にとって、ごく自然な感覚です。大切なのは、その不安を「漠然としたまま放置する」か「整理して行動につなげる」かという違いです。
毎年6〜7月は、ボーナス支給のタイミングで「今の会社に留まる意味」を改めて考える人が増えます。ボーナスをもらうと「とりあえず今は会社にいられている」という安心感が生まれると同時に、「でもこれからどうなるんだろう」という冷静な視点が戻ってくるからです。
1〜3月に「もう辞めたい」と感情的になっていた人が、6〜7月に「落ち着いて考えてみたらやっぱり将来が心配だ」と改めて転職を検討し始めるケースは、私の相談対応でも毎年見られるパターンです。あなたが今この記事を読んでいるとしたら、同じような心理状態にある可能性が高いでしょう。
1,000名以上のキャリア支援を通じて気づいたことがあります。「将来が不安」という言葉の裏には、実は全く異なる4種類の不安が混在しているということです。これを整理せずに転職を考えると、「転職したのに同じ不安が出てきた」という状況になります。
「自分の業界、これから先どうなるんだろう」という不安です。印刷・出版・製造業の特定分野・EC化やデジタル化が進む従来型の小売業などに従事している方から多く聞かれます。「今は仕事があるけど、5年後・10年後に業界ごとなくなってしまうかもしれない」という危機感が核心です。
このタイプは、客観的な業界データで「本当に衰退しているのか・成長しているのか」を確認することが最初のステップになります。
「頑張っても評価されない」「給与テーブルを見ると、40代になっても大して変わらない」という不安です。中小企業や給与体系が固定的な業界で働く20代から多く相談があります。
結婚・住宅購入・子育てなどを将来に見据えたとき、「今の収入の延長線上では生活が成り立たないかもしれない」という現実的な不安が出てくるパターンです。
「今の仕事を続けていても、市場価値が上がっている気がしない」という不安です。AIや自動化が進む中で、「自分の仕事が将来AIに代替されるかもしれない」「特定の会社でしか通用しないスキルしか身についていない」という感覚を持つ人が増えています。
このタイプは、今の職場での経験が転職市場でどう評価されるかを確認することが重要です。
「今後のライフイベントに対応できるだけの収入・働き方が今の会社にはない」という不安です。残業が多くて結婚後の生活が見えない、産休・育休後に復帰できる環境がない、リモートワーク不可で将来の生活設計が立てられない、などが具体例です。
将来の「仕事との付き合い方」が見えないことへの不安であり、職種・会社の規模・業界を変えることで解決できることが多いです。
【自己診断】あなたの不安はどのタイプ?
タイプ | こんな気持ちがある人 |
|---|---|
業界衰退型 | 「この業界、将来なくなるかも」と感じている |
収入頭打ち型 | 「給与体系を見ると、年収の上限が見えている」と感じている |
スキル陳腐化型 | 「今の仕事のスキルが転職市場で通じるか不安」と感じている |
ライフイベント型 | 「今の職場では、結婚・育児後の生活が想像できない」と感じている |
複数のタイプが混在している人も多くいます。自分の不安のタイプを特定するだけで、「何を変えれば不安が解消されるか」がかなり見えやすくなります。
将来が不安になったとき、すぐに「転職しなければ」と焦るのは危険です。まずその不安が、客観的な根拠のある不安なのか、それとも情報不足や思い込みによるものなのかを確認する必要があります。
方法1:厚生労働省「雇用動向調査」で業界の離職率・入職率を確認する
業界別の離職率が上昇していたり、入職者数が減少していたりすれば、業界全体として働く人が離れていっているサインです。厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査」は無料で確認できます。
方法2:厚生労働省「一般職業紹介状況」で業界・職種の求人倍率を確認する
求人倍率が低下傾向にある業界は、採用を絞っている企業が増えているということです。逆に求人倍率が高い業界は、慢性的な人手不足であり、転職市場でも評価されやすい傾向があります。
方法3:会社の財務状況を確認する(上場企業の場合)
上場企業であれば有価証券報告書が公開されています。直近3年間の売上・利益推移を確認して、本当に会社の業績が悪化しているのかを確認してみてください。多くの場合「なんとなく不安」だっただけで、数字を見ると意外と安定していることもあります。
1,000名以上の支援の中で印象に残っているのは、「印刷業界の将来が不安で転職したい」と相談に来た25歳の男性のケースです。話を聞いてみると、業界全体への漠然とした不安ではなく、「社内で新しいデジタル印刷の設備投資が止まっており、同業他社に技術面で遅れを取っている」という非常に具体的な問題でした。彼は転職ではなく、デジタル印刷に強い同業他社への転職という選択をして、キャリアを維持しながら環境を変えることができました。一方で、「この業界はもう終わりだ」と思い込んでいたが、データを確認したら業界全体はむしろ成長していたという事例も複数あります。
不安の「根拠」を確認するだけで、転職すべき理由が明確になったり、逆に「もう少し今の環境で動ける」と気づいたりすることが多いです。
将来不安を感じているとき、「転職すれば解決する」と思いたくなるのは自然です。でも、転職は万能ではありません。解決できる不安とできない不安があります。
以下の不安は、転職という手段で解決できる可能性が高いです。
業界の将来性への不安:成長業界・職種に移ることで根本から解決できる
収入の頭打ちへの不安:給与テーブルの良い会社・実力主義の企業に移ることで解決できる
スキル陳腐化への不安:市場価値の高いスキルが身につく環境に移ることで解決できる
ライフイベントへの不安:リモートワーク可・育休取得率が高い企業に移ることで解決できる
これらは「今いる環境の構造的な問題」であり、環境を変えれば不安の根本原因が消えます。
一方で、以下の不安は転職しても繰り返されやすいです。
「何をやっても不安になる」という思考パターンそのものの問題
「自分が将来どうなりたいか」というビジョンが全くない状態での不安
「今の職場への不満」が将来不安に変換されているだけのケース
このタイプの不安は、転職先でも同じような不安が出てきます。転職という行動で解決するのではなく、「自分がどうなりたいか」というキャリアビジョンを先に整理する必要があります。
私が支援してきた中で、転職後も同様の不安を繰り返した人には共通点がありました。「今の不満から逃げる転職」だったことです。現職への不満が将来不安に変換されており、「この業界は将来が暗い」「この会社では成長できない」という形で語られていましたが、実際は「職場の人間関係が嫌だ」「今の仕事が合わない」という即時的な不満が根本にありました。
転職先でも職場に不満が出てくると、また「この業界・会社では将来が…」という不安が再発します。転職前に「自分は何から逃げたいのか・何に向かって進みたいのか」を分けて整理することが、転職後の後悔を防ぐ最重要ポイントです。
将来不安を感じているすべての人が今すぐ転職すべきというわけではありません。でも、「この状態なら真剣に検討したほうがいい」というサインはあります。
状態1:将来不安の根拠が客観的なデータで裏付けられている
業界の求人倍率が低下している、自社の業績が3年連続で悪化している、同業他社と比べて明らかに給与テーブルが低いなど、データで確認できる事実がある場合は、不安は「思い込み」ではなく「根拠のある危機感」です。この場合は早めに動くほど転職市場での選択肢が広がります。
状態2:現職でスキルが積み上がっていない実感が続いている
1年以上同じ業務を繰り返していて、転職市場で評価されるスキルが何も増えていないと感じるなら、それは「スキル陳腐化型」の不安が現実化しつつあるサインです。20代の成長スピードは職場環境で大きく変わります。環境を変えることが最善策になるケースです。
状態3:3年後・5年後のキャリアイメージと現職の延長線が全く合っていない
「自分はこんな仕事をしたい・こんな生活をしたい」というビジョンが少しでもあって、今の会社の延長線上にそれが全くない場合は、早期に動く価値があります。特に20代後半は、転職市場での評価が高い時期です。
以下の状態のときは、焦って転職活動を始めるより、まず現状を整理することを優先してください。
「今の不満から逃げたい気持ち」が将来不安に変換されている可能性が高い
将来のキャリアビジョンが全くない(「今の仕事が嫌」という以上のことが言語化できない状態)
体調・精神的に疲弊している(疲れているときの判断は後悔しやすい)
「今すぐ動くべきか・もう少し整理してから動くべきか」は、自分一人では判断が歪みやすいです。客観的に整理してくれる第三者の存在が、この時期には特に有効です。
「将来が不安だから転職したい」という動機は、面接でそのまま伝えると採用担当者に「自社に来てもまたすぐ不安になって辞めるんじゃないか」という印象を持たれるリスクがあります。
転職支援事業責任者として多くの採用担当者と接してきた私が正直にお伝えすると、「将来が不安で転職したい」という志望動機を面接で聞いたとき、採用担当者が真っ先に考えるのは「それは自社では解決できる問題なのか?」です。
将来性への不安を持って転職してくる候補者を採用担当者は否定的に見ているわけではありません。ただ、「漠然とした不安」のまま転職を決めた人は、入社後も同じように「もっといい環境があるかもしれない」という思考で離職する可能性が高いと見ています。逆に「この不安を解消するために、御社のこの部分が決め手になった」と具体的に語れる人は、採用側から見ると非常に信頼できる候補者です。
NG例:
「今の業界の将来性に不安を感じているので、転職を考えました。御社であれば成長できると思いました。」
採用担当からは「なぜ弊社が成長できるのか根拠がない」「不安から逃げてきただけでは」と映ります。
OK例:
「現職の業界が市場縮小傾向にある中で、私自身が3年後・5年後に市場価値の高い人材になるには環境を変えるべきと判断しました。具体的には、御社が注力している〇〇の領域でスキルを積むことで、自分のキャリアの柱を作りたいと考えています。」
「業界の課題→自分のキャリアゴール→御社を選んだ具体的な理由」がセットになっていると、採用担当者に「この人は将来に対して主体的に考えている人だ」という印象を与えられます。
将来が不安なことを理由に転職を検討するのは、甘えでも逃げでもありません。不安の根拠が客観的に確認できるのであれば、むしろ早期に行動することが正しい選択です。問題は「不安の正体を整理せずに転職する」ことです。自分の不安がどのタイプで、それが転職で解決できるものかを確認してから動くことが重要です。20代のうちに将来を見据えて行動することは、キャリア形成において非常に合理的な判断といえます。
「20代のうちに転職しないと不利」という絶対的なルールはありません。ただし、転職市場において20代はポテンシャル採用の対象として評価されやすい時期であるのは事実です。厚生労働省「雇用動向調査」でも、20代の転職入職率は他の年代に比べて高く、市場として活発です。問題は転職するかしないかではなく、「このまま今の環境にいることのメリット・デメリット」と「転職することのメリット・デメリット」を整理できているかです。焦って動く必要はありませんが、整理を後回しにし続けることにもリスクがあります。
業界・職種の将来性を判断する際は、感覚ではなくデータを基準にすることを勧めます。厚生労働省の「雇用動向調査」や「一般職業紹介状況」で業界・職種別の求人倍率を確認することが第一歩です。求人倍率が長期的に高い領域は、社会から人材が必要とされている領域です。加えて、「AI・デジタル化によって代替されにくいスキルを使う職種かどうか」「少子高齢化・医療・インフラなど社会構造的に需要が続く業界かどうか」という視点も有効です。転職市場で長期的に評価されやすいのは、特定のツールより「問題解決力」「コミュニケーション力」「専門的な判断力」が必要な仕事です。
一人で考え続けても解消しない将来不安は、第三者に話すことで整理されることがほとんどです。具体的には、国家資格キャリアコンサルタントへの相談が最も効果的です。自分では「業界が原因」と思っていても、話してみると「実は収入の問題だった」「今の職場環境の問題だった」という整理ができることは珍しくありません。MyStyle転職では、キャリアコンサルタントがLINEで無料相談を受け付けています。「転職するかどうかも決まっていない」という段階でも全く問題ありません。まず話すことから始めてください。
「仕事の将来が不安で転職したい」と感じている20代へ、この記事でお伝えしたことを整理します。
将来不安は「業界衰退型・収入頭打ち型・スキル陳腐化型・ライフイベント型」の4タイプがある。まず自分の不安がどのタイプかを把握することが最初のステップです
不安が根拠のあるものか思い込みかを確認する。厚生労働省の統計データや会社の財務情報など客観的な情報で不安の「根拠」を確かめてから動くことが重要です
転職で解決できる不安とできない不安がある。「今の環境の構造的問題」は転職で解決できるが、「思考パターンの問題」や「キャリアビジョンの欠如」は転職先でも繰り返される
転職を前向きに考えていい状態かどうかを判断する基準がある。客観データに根拠がある・スキルが積み上がっていない・3年後のビジョンと現職の延長線が合っていない、という状態なら転職を検討する価値が高い
面接での伝え方次第で、将来不安からの転職動機は武器になる。「不安から逃げた転職」ではなく「将来を主体的に選んだ転職」として語れるかどうかが採用結果を分ける
漠然とした将来不安を抱えたまま一人で悩み続けるのは、精神的にも時間的にももったいないです。不安の正体を整理するだけで、次に取るべきアクションが見えてきます。
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