
製造業で夜勤を含む不規則なシフト勤務。体力的にも精神的にも限界を感じていたものの、「働き方を変えたい」以外に何も言葉にできなかったH.Tさん(28)。転職活動は求人を見ることではなく、条件を紙に書き出すところから始まった。
H.Tさん(28歳・男性)
製造業(夜勤あり・シフト勤務) → 営業職(土日祝休み)
—— 相談される前は、どんな状況でしたか。
製造業で、夜勤ありの不規則なシフトで働いていました。仕事の内容そのものが嫌だったわけではないんです。ただ生活のリズムが定まらないのが、じわじわ効いてくる。
2交代で、1週間ごとに昼と夜が入れ替わるんです。体が慣れてきたころに、また切り替わる。休みの日は、起きたら15時でした。そのうち友達の誘いも断るようになって。体力的にも精神的にも、これは限界だなと。
—— 転職しよう、とすぐ動けましたか。
それが、動けなかったんです。「辞めたい」ははっきりしているのに、「じゃあ何をするのか」がまったく出てこなくて。
求人サイトを見ても業種も職種もありすぎて、どこから見ればいいのか分からない。「土日休み」で絞ってみても、まだ何千件も出てくるわけです。5分くらい眺めて、そのまま閉じる。それを何回もやっていました。
—— それで相談されたんですね。
はい。何から手をつければいいか分からない、というところから相談しました。正直、まず条件の整理を手伝ってほしいという感覚でした。
—— 最初の面談では、何をしましたか。
「どんな働き方がしたいか」を、とにかく全部書き出すところからでした。休みの取り方・勤務時間・通勤時間・収入・人と関わる量・体を使う量。思いついたものを、良し悪しの判断なしにひたすら出していく。全部で20個以上出ました。
その場で求人が出てくると思っていたので、拍子抜けしました。でもやってみると、自分が何にしんどくなっていたのかがはっきりしてきて。「夜勤がつらい」だと思っていたものが、正確には「予定が立たないのがつらい」だった。夜勤そのものより、来月の予定を入れられないのが嫌だったんです。
—— 書き出したあとは、どうされたんですか。
並べたものに順番をつけました。絶対に譲れないもの・できれば欲しいもの・実は無くても平気なものの3つに分ける作業です。
これがきつかったです。全部欲しいので。ただ「全部満たす求人を探すと結局ゼロ件になります」と言われて、それはそうだなと。最終的に、絶対に譲れないのは土日祝の休みと夜勤がないこと。この2つに絞りました。年収は「できれば」のほうに落としました。
「全部を満たす求人を探すと、結局ゼロ件になります。何を最初に守るか決めましょう」
── 条件を並べ替えているとき
軸が2つに決まってからは、求人を見るのが苦じゃなくなりました。見るべきものが決まっているので、開いて数秒で判断できるんです。
—— 営業職は、最初から考えていたんですか。
いえ、考えていませんでした。ずっと製造の現場にいたので、自分が人に売る仕事をするイメージがなかったんです。営業と聞くと、飛び込みとノルマしか浮かばなくて。
ただ土日祝休みで夜勤なしという条件で見ていくと、現実的に選択肢に入る職種のひとつが営業でした。それに現場でも、次の工程の人と段取りを詰めたり、納期を調整したりはしていたんです。「それ、社内でやっている営業みたいなものですよ」と言われて。そこで、受けてみようと思えました。
—— 面接対策はどうでしたか。
20回以上やりました。人と話す仕事に移るわけなので、面接そのものが試験みたいなものだという話をされて。
最初のうちは志望動機を聞かれても、「土日休みだから」としか言えなかったんです。本音ではあるんですが、それだけだと弱い。練習を重ねるなかで、「なぜその働き方が必要なのか」「その上でこの会社で何をしたいのか」を自分の言葉でつなげられるようになりました。最初の3回くらいは、自分の受け答えを振り返るのが嫌でしたけど。
—— 結果はどうなりましたか。
土日祝休みの営業職に内定をいただきました。収入も、年間で50万円ほど上がりました。
—— 生活は変わりましたか。
変わりました。夜勤のない生活が、こんなに快適だとは思っていませんでした。毎週決まった日に休めるので、予定を先に入れられるんですよね。友達の結婚式にも、断らずに行けました。それだけで、休みの使い方がまったく変わりました。
—— いま振り返って、分かれ目はどこでしたか。
最初に条件を全部書き出したところだと思います。あれをやらずに求人を見ていたら、たぶん「給料が高いほう」で選んでいました。夜勤ありのほうが手当がつくぶん高いので。そうすると、また同じ働き方に戻っていた可能性が高いです。
—— 同じように悩んでいる方へ、何か伝えるとしたら。
体がしんどい働き方は、我慢し続けるものではないと思います。慣れるものだと思っていましたが、そうではなかったです。
あと、やりたい仕事が分からなくても大丈夫です。自分もそうでしたが、条件を整理するだけで道は見えてきます。そこからでいいので、まず相談してみてください。
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