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派遣を続けるか正社員を目指すかは、「なぜ正社員になりたいのか」を先に言葉にしてから決めるのが基本です。理由があいまいなまま雇用形態だけを変えても、入社した後に同じ不安を抱えやすくなります。
一方で、正社員と正社員以外では、年齢が上がるほど賃金の差が開く傾向があります。気持ちの整理と数字の両方を知ったうえで、自分に合う働き方を選ぶことが大切です。
この記事では、判断の基準と、派遣から正社員を目指す進め方を、国家資格キャリアコンサルタントが解説します。
派遣か正社員かを考えるとき、気持ちだけで決めると後から迷いが残ります。先に、働き方によって何に差が出やすいのかを数字と仕組みの面から確かめておきます。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、雇用形態別の賃金(男女計)は次のとおりでした。ここでいう正社員・正職員以外には、派遣社員だけでなく契約社員なども含まれます。
年齢 | 正社員・正職員 | 正社員・正職員以外 |
|---|---|---|
20〜24歳 | 247.5千円 | 203.5千円 |
25〜29歳 | 285.0千円 | 227.9千円 |
40〜44歳 | 379.0千円 | 230.6千円 |
20〜24歳では差が月4万4千円ほどですが、40〜44歳になると14万8千円ほどに広がります。正社員以外の賃金は年齢を重ねてもあまり上がらず、正社員は年齢とともに上がっていく傾向が、この数字から読み取れます。
派遣の仕事は、契約の期間ごとに更新するかどうかが決まる形が多く、次の更新があるかどうかを気にしながら働くことになります。担当する業務の範囲が決まっているぶん、責任の重い仕事や新しい業務を任される機会が限られる場合もあります。
一方で、派遣には勤務地や勤務時間、仕事内容を選びやすいという良さがあります。正社員は異動や昇格を通じて任される仕事が広がる代わりに、会社の都合で担当が変わることもあります。どちらが良いかではなく、今の自分にとってどちらの特徴が大事かで考えることが大切です。
賃金や仕組みの違いを知ったうえで、今の自分がどちらを選ぶべきかを考えます。判断の軸は、「派遣を選んでいる目的があるか」と「不安が続いているか」の2つです。
派遣を続けてもよいのは、派遣を選んでいる目的がはっきりしている場合です。たとえば、資格の勉強のために勤務時間を調整したい、家庭の事情で働く曜日を選ぶ必要がある、未経験の職種を試してから方向を決めたい、といった理由です。
大切なのは、目的と期限をセットで決めておくことです。「資格試験が終わる来年の春までは派遣で働き、その後に正社員を目指す」のように期限を決めておけば、派遣で働く期間が、次に進むための準備期間になります。目的も期限もないまま続けていると、気づいたときに年齢だけが上がっていることになりかねません。
「このままでいいのか」という不安が数か月以上続いているなら、正社員を目指すことを具体的に考えるタイミングです。同じ作業の繰り返しで経験が増えている実感がない、更新のたびに次の契約が気になる、といった状態もサインになります。
MyStyle転職の支援事例に、派遣で製造ラインの仕事をしていた25歳の方がいます。話を聞くと、派遣という働き方そのものより、「この先もこのままでいいのか分からない」という漠然とした不安のほうが大きかったことが分かりました。不安の正体が働き方への不満でなく先の見えなさなら、正社員を目指す理由になります。
NG例(派遣か正社員かを考えるとき)
「周りが正社員だから」とだけ考えて、理由を言葉にしないまま応募する
不安を感じながら、期限を決めずに更新を続ける
OK例(派遣か正社員かを考えるとき)
「経験を積み上げられる働き方をしたい」など、正社員を目指す理由を一文にする
派遣を続けるなら、目的と期限をセットで決める
正社員を目指すと決めたら、その理由を具体的な言葉にします。理由がはっきりしていると、求人の選び方も面接での話し方も定まります。
まず、今感じている不安を書き出し、「収入」「雇用の安定」「仕事内容」の3つに分けます。収入の不安なら賞与や昇給の仕組みがある会社、雇用の安定なら長く働ける会社、仕事内容なら任される業務が広がる会社というように、優先して見るべき条件が変わります。
3つすべてが当てはまる場合は、どれが一番大きいかに順位をつけます。全部を同じ重さで求めると、求人を選べなくなるからです。一番大きな不安を解消できる会社を軸に、ほかの条件は許容できる範囲で考えます。書き出した不安は、そのまま求人を比べるときのチェック項目として使えます。たとえば収入が一番なら、月給だけでなく賞与の支給実績まで並べて比べます。
先ほどの支援事例の方は、これまでの仕事を振り返る中で、モノを黙々と扱う作業より、人とやり取りする場面のほうが楽しかったという事実を一つずつ拾い上げました。そのうえで、雇用形態を変えることを目的にせず「なぜ正社員になりたいのか」を明確にしてから求人を選び、営業職の正社員になって年収が50万円上がりました。
派遣でいくつかの職場を経験しているなら、それぞれの職場で楽しかった場面とつらかった場面を並べてみます。共通して楽しかった場面が、正社員として選ぶ職種のヒントになります。楽しかった理由が「人に感謝された」「作業を工夫して早くなった」などに分かれるなら、その理由に近い仕事ほど、正社員になってからも続けやすくなります。
正社員になる道は一つではありません。今の派遣先で目指す方法と、外の会社の正社員に応募する方法があり、自分の状況に合うものを選びます。
1つ目は、今の派遣先に直接雇用されることです。派遣先から声がかかることもありますが、必ずあるものではないため、希望があるなら派遣会社の担当者に伝えておきます。直接雇用の話が来たときは、正社員なのか契約社員なのかを必ず確認します。
2つ目は、紹介予定派遣を使う方法です。派遣期間が終わった後に、派遣先の会社に直接雇用されることを前提にした働き方で、実際に働いて職場を知ってから入社を決められます。派遣会社の求人の中から、紹介予定派遣と書かれたものを探します。派遣期間中に仕事内容や職場の雰囲気を確かめられるのが利点ですが、期間が終わっても必ず直接雇用されるわけではない点は理解しておきます。
3つ目は、派遣で経験した職種と同じか近い職種の正社員求人に応募する方法です。派遣で担当した業務は、正社員の選考でも職務経験として伝えられます。事務の派遣なら事務職、製造の派遣なら製造職や、製造業の会社の別の職種も候補になります。
経験のある職種で応募すれば、仕事内容を具体的に理解していることが強みになります。反対に、派遣の経験とは違う職種に進みたい場合は、なぜその職種を選ぶのかを、過去の仕事で楽しかった場面と結びつけて説明できるように準備しておきます。求人は、転職サイトや転職エージェントで「未経験可」「派遣経験者歓迎」などの条件で探すと、派遣での経験を評価してくれる会社に絞り込めます。
面接では、正社員を目指す理由と、これまで派遣を続けてきた理由の2つを聞かれることが多くあります。どちらも、過去を否定せずに今の考えにつなげて話します。
「派遣社員として2年間、製造ラインで検品を担当してきました。不良品を見つけたときに、ほかの工程の担当者と話して原因を一緒に考える場面に、一番やりがいを感じていました。人と関わりながら長く経験を積める働き方をしたいと考え、正社員として御社の営業職を志望しました。」
派遣での具体的な業務、やりがいを感じた場面、正社員を目指す理由の順に話しています。派遣の仕事を否定せず、そこで気づいたことを志望理由の根拠にしているのがポイントです。「派遣だったから」と雇用形態の話で終わらせず、仕事の中身で語ると、面接官に働く姿を想像してもらいやすくなります。
「卒業後は、いろいろな職場を経験してから方向を決めたいと考え、派遣で働いてきました。3つの職場を経験する中で、決まった作業を続けるより、人とやり取りする仕事のほうが力を発揮できると分かりました。方向が定まった今は、一つの会社で腰を据えて働きたいと考えています。」
派遣を選んだ理由を正直に話し、その期間で分かったことを伝えています。最後に長く働く意思を示すことで、面接官が気にしやすい「また辞めるのでは」という不安に先回りして答えています。派遣を選んだ理由がはっきりしない場合でも、その期間に分かったことを一つ見つけて話せば、同じ流れで答えられます。
派遣を続けるなら、目的と期限をセットで決める
不安を「収入」「雇用の安定」「仕事内容」に分け、一番大きいものに順位をつける
派遣先で楽しかった場面とつらかった場面を並べ、職種のヒントを探す
直接雇用、紹介予定派遣、正社員求人への応募から自分に合う道を選ぶ
まずは、「なぜ正社員になりたいのか」を一文で書き出してみてください。
Q. 派遣から正社員になると、給料は上がりますか。
月給が同じくらいでも、賞与や昇給、退職金の有無によって、年収や数年後の収入に差が出ることがあります。求人票では月給だけでなく、賞与の支給実績や昇給の回数、退職金制度の有無まで確認しておくと、派遣を続けた場合と比べやすくなります。
Q. 派遣会社に正社員になりたいと相談してもいいですか。
相談して構いません。派遣会社によっては、紹介予定派遣の求人を扱っていたり、正社員への転職支援をしていたりします。担当者に正社員を目指していることと希望の職種を伝えておくと、合う求人が出たときに声をかけてもらいやすくなります。
Q. 派遣の経験は職務経歴書にどう書けばいいですか。
雇用されていた派遣会社の名前を書き、その下に派遣先の業種、担当した業務、期間を書きます。派遣先が複数ある場合は、派遣先ごとに業務を分けて書くと、どんな経験を積んできたのかが伝わりやすくなります。派遣先の社名は、書いてよいか確認してから書きます。
Q. 派遣先から直接雇用の話が来たら、受けたほうがいいですか。
直接雇用には、正社員のほかに契約社員やパートの形もあります。雇用形態、給与、仕事内容、契約期間の有無が今と比べてどう変わるのかを書面で確認してから決めます。条件を聞く前にその場で返事をする必要はありません。
Q. 正社員を目指す間、派遣の仕事は辞めたほうがいいですか。
辞めずに続けながら活動するほうが、収入が途切れず、焦って応募先を決めることを避けやすくなります。面接の日程が平日に入る場合は、派遣会社の担当者に早めに相談して、勤務日の調整ができるかを確認しておきます。
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