奨学金を返しながら正社員を目指せる? 減額返還と代理返還の使い方

最終更新:

2026/9/8 04:37

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奨学金の返済があること自体は、応募や採用の判断に使われません。返済が苦しい場合には、月々の返還額を最大4分の1まで減らせる減額返還制度と、返還そのものを後ろ倒しにする返還期限猶予制度が用意されています。

さらに、返還額を企業が日本学生支援機構へ直接送金する代理返還制度を導入している会社もあります。返済を抱えていることは、応募をやめる理由にはなりません。

この記事では、2つの公的制度の使い方、返還支援制度がある企業の探し方、面接で聞かれたときの例文までを、国家資格キャリアコンサルタントが解説します。

奨学金の返済があること自体は選考に影響しない

まず、一番大きな不安から整理していきましょう。

応募や採用の判断に使われない理由

採用する側が選考で見ているのは、これまで何をしていたかと、入社後にどう働いていくつもりなのかという部分です。個人の借入状況を調べる手段を、一般的な中途採用の選考では持ちません。

奨学金は、学ぶために制度を使ったという事実であって、返済を続けていることはむしろ約束を守っているということです。返済があるからという理由で応募を見送るのは、実際には応募できた求人まで除外することになります。

例外的に確認される場面

ただし、例外はあります。入社後に金銭を扱う仕事や、警備業など一部の職種では、採用の過程で身元に関する確認が行われることがあります。この場合も、確認の対象は会社ごとに違います。

大切なのは、全ての求人で確認されるわけではないと知っておくことです。気になる場合は、応募する前に確かめることができます。先に不安だけを広げて応募をやめてしまうと、確かめる機会自体がなくなります。

返済が苦しいときに使える公的な2つの制度

返しながら探すために、先に知っておきたい制度が2つあります。どちらも日本学生支援機構の制度です。

月々の返還額を減らす減額返還制度

減額返還は、返還をやめるのではなく、月々の額を下げて続ける制度です。機構の説明では、返還月額を「2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減額して返還することができる」とされています。額を下げた分だけ、返還期間は延びます。

適用できる期間は、「1回の願出につき12か月まで」で、「通算適用期間は15年(180か月)が限度」とされています。一度申し込めばずっと続くものではなく、毎年の手続きが必要になります。

経済困難を理由とする場合の収入基準は、給与所得者であれば「年間収入金額400万円以下(本人が扶養している子供の人数が2人の場合は500万円以下、3人以上の場合は600万円以下)」です。給与所得以外の所得を含む場合は「年間所得金額300万円以下」が目安とされています。また、被扶養者については「1人につき38万円を収入・所得金額から控除することができる」とされています。

アルバイトでの収入は、この400万円という基準を大きく下回ることが多くなります。つまり、今の状態であれば対象になる可能性があるということです。

返還そのものを先送りする返還期限猶予

返還期限猶予は、一定期間、返還そのものを待ってもらう制度です。機構は、経済困難、傷病、災害等で返還が困難になった場合に返還期限を猶予する制度と説明しています。

適用期間は「通算10年(120か月)が限度」です。ただし、災害、傷病、生活保護受給中、産前休業・産後休業および育児休業などの場合には、10年の制限が適用されません。

注意したいのは、猶予は元本が消える制度ではないという点です。先送りにした分は、あとで返すことになります。就職活動の間だけ一時的に使う、収入が安定したら戻すといった使い方が現実的です。

NG例(制度の使い方)

  • 滞納してからどうするか考える

  • 制度を知らないまま応募を後回しにする

OK例(制度の使い方)

  • 支払いが困難になる前に願い出る

  • 就職活動中だけ減額し、収入が安定したら戻す

奨学金の返還を支援する企業を探す3ステップ

制度を使って負担を下げるのとは別に、返還そのものを支援する会社を選ぶという道があります。

1. 代理返還制度の仕組みを知る

日本学生支援機構は、企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度を「企業等が奨学金の返還残額の一部又は全額を、従業員に代わって日本学生支援機構に直接送金する制度」と説明しています。

ここで重要なのは、お金が本人を経由せず、会社から機構へ直接渡るという点です。手当として受け取って自分で振り込む形とは仕組みが違います。

2. 制度導入企業を検索して候補を出す

機構のサイトには制度を導入している企業等の検索ページがあり、地域、業種、企業等名から探せるようになっています。まずは自分の住む地域と、候補にしている業種で検索してみましょう。

この探し方の利点は、求人票を一件ずつ見ていくのと逆の順序になることです。先に制度で会社を絞り、その中から未経験で応募できる求人があるかを見るという進め方ができます。

3. 求人票の福利厚生欄で裏を取る

検索で見つけた会社でも、制度の適用に条件があることがあります。対象になる雇用形態、勤続年数の要件、支援の上限額は、求人票の福利厚生欄や面接で確かめましょう。

なお、支援制度がある会社に絞りすぎると、見る求人は大きく減ります。制度の有無は優先順位の一つにとどめ、仕事の内容や昇給の仕組みとあわせて見るのが現実的です。

正社員になると返済の見通しはどう変わるか

制度の話とは別に、雇用の形が変わることで返済の見通し自体が変わります。

収入が固定されると返済計画を立てられる

時給で働いている間は、月によって収入が変わります。多い月を基準に返済額を決めると、少ない月に取り崩すことになります。月給での雇用に変わると、一ヶ月の収入が先に決まるため、毎月いくら回せるのかを計算できるようになります。

昇給と賞与が返済期間を縮める

昇給や賞与の仕組みがある雇用では、年数を重ねると収入の土台が上がっていきます。返済額が同じでも、余裕が生まれれば繰上返還で期間を短くできます。

逆に、昇給の仕組みがない働き方を続けていると、何年経っても返済に回せる額は大きく変わりません。求人票を見るときは、月給の額だけでなく、昇給と賞与の記載があるかを見ておきましょう。

面接で奨学金について聞かれたときの答え方

ここからは、実際に口に出せる形で見ていきます。いずれも30秒から40秒で話せる長さです。

生活が安定した働き方を選びたい場合の例文

「学校を卒業してからはアルバイトで働きながら奨学金の返済を続けてきました。シフトによって収入が変わるため、先の見通しを立てにくいと感じています。月単位で収入が決まる働き方に変えて、返済も仕事も長く続けられる状態を作りたいと考えて、今回応募しました。返済は滞らせずに続けており、入社後も問題なく続けられます。」

収入の安定を理由にするのは、動機として不自然ではありません。ただし、それだけで終わらせるとどの会社でも良いと受け取られるため、仕事の内容につなげる一文を必ず添えましょう。

返還支援制度を志望理由に含める場合の例文

「応募のきっかけの一つは、奨学金の返還支援制度を導入されていると知ったことです。従業員が長く働けることを前提にされている会社だと感じました。仕事の内容を調べる中で、手順を覚えながら範囲を広げていける点も、自分に合っていると考えています。長く続けて、任される範囲を広げていきたいです。」

制度を理由に挙げるのは問題ありませんが、制度だけを理由にすると待遇目当てと受け取られます。必ず仕事内容への関心とセットで話しましょう。

返済状況を確認されたときの例文

「在学中に借りていた奨学金の返還中です。卒業後から月々の返還を続けており、滞納はありません。収入が少ない時期は減額返還の制度を使って調整しながら、支払いを止めないようにしてきました。入社後は月単位で収入が見込めるため、今よりも落ち着いて返還を続けられると考えています。」

確認された場合に重要なのは、金額ではなく支払いが続いているという事実です。残額を細かく伝える必要はありません。

返済の話で避けたい伝え方4つと言い換え例

同じ事実でも、伝え方で受け取られ方が変わります。

返済のためだけに応募したと伝える

「奨学金を返さないといけないので、給料の高い仕事を探しています」と伝えると、条件が良い他社があれば移ると受け取られます。

言い換えるなら、「収入の見通しを立てられる働き方に変えたいと考えています。そのうえで、手順を覚えて範囲を広げていける仕事を探していました」となります。

生活の苦しさだけを強調する

「返済があって生活が苦しいです」とだけ伝えると、入社後も収入の不満が続くのではという見方をされることがあります。

言い換えるなら、「返済は続けており、制度も使いながら調整してきました。今後は収入を安定させて、計画的に返していくつもりです」となります。困っている事実ではなく、対処してきた事実を出すのがコツです。

返還額や残額を細かく説明する

聞かれてもいないのに残額や月々の額を詳しく説明すると、話の中心が仕事から離れてしまいます。

言い換えるなら、「返還中ですが、滞納はなく続けられています」と一文で収め、相手が追って聞いてきたら答える形にします。

返済があることを隠す

聞かれた場合に隠すのは避けましょう。返還支援制度を利用する場面では会社に伝えることになるため、先に違う説明をしていると、あとで説明がつかなくなります。

言い換えるなら、聞かれたときだけ短く事実を伝え、聞かれていなければ自分からは話さないという形が自然です。

まとめ

  • 返済があること自体は選考に使われない

  • 減額返還は月額を最大4分の1まで下げられ、通算15年が限度

  • 返還期限猶予は通算10年が限度で、元本が消える制度ではない

  • 代理返還制度の導入企業は、地域と業種から検索できる

  • 面接では金額ではなく、支払いを続けている事実を伝える

返済を理由に応募を後回しにすると、条件の良い求人まで逃すことになります。先に制度で負担を下げてから、探すことに集中していきましょう。

よくある質問

Q. 奨学金を滞納しています。就職に影響しますか。

一般的な中途採用の選考で、滞納の有無を確かめる手段はありません。ただし滞納が続くと延滞金が加算されるため、先に機構へ連絡して猶予や減額を相談するほうが損は少なくなります。

Q. 減額返還と返還期限猶予はどちらを先に使うべきですか。

額を下げれば支払えるなら減額返還、支払い自体が難しいなら猶予が選択肢になります。猶予は通算10年、減額返還は通算15年と上限が異なるため、長期で使う見込みがあるかも判断材料になります。

Q. 就職して収入が増えたら、減額返還はすぐに終わりますか。

減額返還は1回の願出で最長12か月分です。期間中に収入が増えても途中で自動的に戻るわけではなく、次の更新をしなければ元の額に戻る形になります。

Q. 履歴書に奨学金のことを書く必要はありますか。

履歴書に返済の有無を記入する欄はありません。返還支援制度を使いたい場合は、内定後の手続きの中で会社に伝える形になります。

Q. 転職で一時的に収入が減る期間はどうしますか。

入社してから最初の給料日までは、ひと月以上空くことがあります。その期間だけ減額返還を適用しておき、収入が安定してから戻すという使い方ができます。