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転職の妥協点は、前の職場を辞めた理由に直結する条件を譲らず、それ以外の条件で調整すると先に決めておくのが基本です。
すべての希望を満たす求人を探し続けると、応募先はなかなか決まりません。どこかで妥協が必要になる場面はありますが、後悔につながりやすいのは、妥協したこと自体ではなく、辞めた理由と同じ不満を次の職場でも抱えてしまうことです。
この記事では、転職で妥協してよい条件といけない条件の分け方と、先に決めておく3つの条件を、国家資格キャリアコンサルタントが解説します。
妥協点を考える前に、実際に転職した人の条件がどう変わったのかを知っておくと、自分の希望を現実的に整理できます。特に、賃金が上がるのか下がるのかは、妥協点を決めるうえで気になる点です。
厚生労働省の令和2年転職者実態調査では、転職によって賃金が「増加した」人は39.0%、「減少した」人は40.1%、「変わらない」人は20.2%でした。年齢別に見ると、20〜24歳では増加46.5%、減少33.2%、25〜29歳では増加46.3%、減少33.0%で、20代では増えた人のほうが多くなっています。
それでも、20代の3人に1人は転職で賃金が下がっています。転職ではすべての条件が良くなるとは限らず、何かを優先すれば別の何かが変わることを前提に考える必要があります。転職前に、今の賃金からどのくらいまでなら下がっても生活できるかを計算しておくと、応募先を選ぶ基準になります。
同じ調査で、転職者の今の勤め先への満足度を項目別に見ると、「満足」と答えた人の割合から「不満」と答えた人の割合を引いた値(D.I.)は、「仕事内容・職種」が60.5ポイントで最も高く、「賃金」が19.5ポイントで最も低くなっていました。職業生活全体では42.0ポイントでした。
賃金への満足度が低めでも、職業生活全体では満足が不満を大きく上回っています。賃金だけで職場への満足が決まるわけではないことがうかがえるため、妥協点を考えるときは、賃金以外の条件も含めて比べることが大切です。
妥協しても後悔しにくい条件と、妥協すると同じ不満を繰り返す条件があります。分ける基準は、今の職場を辞めたい理由とつながっているかどうかです。辞めたい理由を解消できない転職は、ほかの条件が良くなっても、同じ悩みを抱えやすくなります。
令和2年転職者実態調査で、自己都合で前の職場を辞めた理由(3つまでの複数回答)は、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%で最も高く、「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.0%、「賃金が低かったから」が23.8%でした。
労働時間や休日、仕事内容、賃金は、辞める理由として挙がりやすい条件です。自分が辞めたい理由がこのどれに当てはまるのかを確かめ、その条件が次の職場で改善できるかどうかを、応募先を選ぶときの基準にします。辞めたい理由が複数ある場合は、一番つらい理由から順に並べておくと、譲れない条件を絞りやすくなります。
たとえば残業の多さが辞めたい理由なのに、給料の高さに惹かれて残業の多い会社を選ぶと、入社後に同じ理由で辞めたくなります。辞めたい理由に直結する条件は、妥協点ではなく「譲れない条件」として扱います。
MyStyle転職の支援事例では、夜勤のある不規則なシフトに限界を感じていた28歳の方が、条件を我慢するのではなく、何がつらくて何なら耐えられるのかを先に言葉にしました。その結果、土日祝休みという譲れない条件と、人と話す仕事への興味の両方を満たす営業職に絞り、年収も50万円上がりました。
妥協点を決めるときは、条件を3つの種類に分けて考えます。この3つを応募の前に書き出しておくと、求人を見るたびに迷わずに済みます。
1つ目は、今の職場を辞めたい理由を解消するための条件です。残業が理由なら月の残業時間の上限、休日が理由なら年間休日の日数や土日休みといった形で、数字や具体的な言葉で書き出します。
この条件は、どれほど他の条件が良くても譲りません。1つか2つに絞っておくと、応募先を選ぶ基準がはっきりします。
2つ目は、生活を続けるために必要な最低ラインです。家賃や生活費から逆算した月給の下限、通勤にかけられる時間の上限などが当てはまります。
最低ラインは「これ以上なら満足」ではなく「これを下回ると生活が成り立たない」という基準で決めます。支援事例でも、結婚を見据えて正社員を目指した24歳の方は、結婚という具体的な節目があったことで、譲れる条件と譲れない条件を整理しやすくなっていました。
3つ目は、その仕事で将来につながる経験を得られるかどうかです。今は給料が少し低くても、身につく経験が次の転職や昇給につながるなら、目先の条件は妥協してよい場合があります。
入社後にどのような仕事を任され、どのような経験を積めるのかを、求人票や面接で確かめます。この条件を持っておくと、目先の条件の差だけで判断せずに済みます。
NG例(転職の妥協点を決めるとき)
「給料が高いから」と、辞めたい理由だった残業の多さに目をつぶって応募する
条件をすべて満たす求人が出るまで待ち、応募を先延ばしにする
OK例(転職の妥協点を決めるとき)
辞めたい理由を解消する条件だけは譲らず、それ以外は調整すると決めておく
月給の下限や通勤時間の上限など、最低ラインを数字で書き出しておく
譲れない条件と最低ラインが決まったら、それ以外の条件は妥協点の候補になります。ただし、妥協する前に確かめておきたいことがあります。その条件を本当に手放してよいのか、あとから変えられる条件なのかを分けて考えます。
条件の中には、自分では必要だと思い込んでいても、実際には選考や入社後の壁にならないものがあります。支援事例では、長く接客業を続けてきた26歳の方が「事務職はパソコンが得意な人がやるもの」と思い込み、事務職を選択肢から外していました。入社後の研修でスキルを補える求人もあると知り、Excelの基本操作を練習して、土日祝休みの事務職に転職しています。
「経験者でないと無理」「資格がないと応募できない」と感じている仕事も、求人の応募資格を確かめると、未経験から応募できる場合があります。思い込みで外していた条件を見直すと、妥協しなくても希望に近い求人が見つかることもあります。
給与や担当する業務のように、入社後の昇給や異動で変わる可能性がある条件は、最初の段階では優先度を下げても後悔しにくい条件です。反対に、土日が忙しい業界の休日のように、仕事の性質から変わりにくい条件は、入社後に変えるのが難しくなります。
変えられるかどうかは、面接で昇給の仕組みや異動の実績を聞くと判断しやすくなります。入社時の給与が希望より低くても、昇給の基準がはっきりしている会社なら、数年後に希望の水準へ近づける見通しを立てやすくなります。
面接では、前職より条件が下がる場合に「本当に大丈夫ですか」と確認されることがあります。優先順位を決めたうえで応募していることを伝えます。
「はい、前職より月給が下がることは理解したうえで応募しています。前職では毎月40時間を超える残業が続き、この先も長く働くには働き方を見直す必要があると考えました。御社は残業が月10時間程度と伺い、仕事に集中できる環境だと感じています。まずは仕事を覚えて成果を出し、昇給につなげたいです。」
給料が下がることを理解していると最初に伝え、そのうえで何を優先したのかを具体的な数字で説明しています。条件を妥協した理由が前向きな優先順位として伝わると、入社後にすぐ辞めてしまう心配も持たれにくくなります。最後に入社後の目標を添えることで、条件だけで選んだ印象を避けられます。
「一番優先したいのは、土日に休めて生活のリズムを整えられることです。前職ではシフト制で休みが不規則だったため、長く働くにはここを変えたいと考えています。次に、人と話しながら提案する仕事ができることを大切にしています。勤務地や給与については、ある程度の幅があっても前向きに考えています。」
優先順位の高い条件から順に理由を添えて伝え、柔軟に考えられる条件もはっきり示しています。すべての条件を「どれも大事」と答えるより、譲れない点と調整できる点を分けて話すほうが、自分のことを理解している人だと受け取ってもらえます。
前の職場を辞めた理由に直結する条件は、妥協点ではなく譲れない条件にする
月給の下限や通勤時間の上限など、生活を続けるための最低ラインを数字で決める
将来につながる経験を得られるなら、目先の条件は調整してもよい
思い込みで外している条件がないか、求人の応募資格を確かめる
まずは、今の職場を辞めたい理由を3つ書き出し、それぞれを解消する条件に言い換えてみてください。
Q. 妥協点が多すぎて、どこから決めればいいか分かりません。
最初に今の職場を辞めたい理由を書き出し、それを解消する条件だけを決めます。残りの条件は、求人を見ながら「これがなければ応募しないか」と一つずつ問いかけ、答えが「それでも応募する」になるものを妥協点に回します。一度にすべて決めようとせず、順番に絞ると整理しやすくなります。
Q. 年収が下がる転職は後悔しますか。
年収が下がること自体が、後悔の原因になるとは限りません。辞めたい理由だった残業や休日の問題が解決するか、生活に必要な額を下回らないかを確かめます。入社後の昇給の仕組みや、同じ職種で数年働いた人の給与の目安も聞いておくと、数年後の収入を見通しやすくなります。
Q. 妥協して入社した会社が、やはり合わなかったらどうすればいいですか。
合わないと感じた点が、先に決めた譲れない条件なのか、妥協した条件なのかを分けて考えます。妥協した条件なら、入社前に想定していた範囲かどうかを振り返ります。譲れない条件が守られていないなら上司に相談し、改善されない場合に次の職場を考えます。
Q. 未経験の職種に転職する場合も、妥協は必要ですか。
未経験の職種では、最初の給与が経験者より低めに設定されている求人もあります。その場合は、入社後に経験を積んで昇給できる仕組みがあるかを確かめ、将来につながる経験として受け入れられるかを考えます。譲れない条件と最低ラインは、未経験の場合も同じように守ります。
Q. 内定が出た後に、妥協した条件が気になり始めました。
内定を承諾する前に、気になっている条件が譲れない条件なのか、妥協点として受け入れた条件なのかを確かめます。妥協点として決めていたなら、他の条件と合わせて全体で判断します。確認したい点がある場合は、承諾の前に人事の担当者に質問し、書面の条件と照らし合わせます。
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